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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.129「大人が英語を学び直すときに大切なこと」

社会人です。英語で話せるようになりたいです。日常の簡単な会話だけでもできるようになりたくて、いろいろ本(英会話の本)を買ってみるのですが、読みきれません。学生時代、英語はそんなに得意ではありませんでした。文法は苦手だったので、やはり基礎から学び直すべきかとも思うのですが、まずは単語を覚えて、それから文法を勉強したほうが良いですか?アドバイスをよろしくお願いします。


 

 

まずは基礎固めから

英会話ができるようになりたいと考える方は少なくありません。日常的に英語を使う環境にない方でも、簡単な会話だけでも英語でできるようになると、海外から来日している観光客とちょっとした会話を楽しんだり、海外旅行先で現地のショップ店員と話したりできますし、今ではSNSを通して海外の方と話されている方も少なくないようです。ここでは、簡単な英会話ができるようになるための基礎を身につける学習について紹介させていただきます。

 

大人だからこそ語彙と文法の重視を! 

まず、学習方法についてですが、大人が言語を学習する場合、基本的な文法や語彙をまとめて覚えておいて、それを練習するという方法は効率的だということは研究で分かっています。学生時代の英語学習を振り返って、文法はあまり得意ではなかったということですし、この機会にしっかり復習しておくと今後の英語学習のために役立つはずです。まだ、基礎的な文法知識が不足しているのであれば、中学や高校レベルの英文法を復習しておくのがいいでしょう。

中でも最初にどうしても身につけたいのが、基本的な語順、節や句などの基本的な文構造です。語順は日本語とは大きく異なりますので、英語の語順を身につけてください。そして文構造ですが、文の構成要素が分かると、意味の解釈にも英文法の学習にも大いに役立ちます。たとえば、以下の英文を見て下さい。

(a) This singer is popular.

   (この歌手は人気がある)

(b) This 17-year-old Korean singer is very popular.

   (この17歳の韓国人歌手はとても人気がある)

この二つの例文は、いずれも主語(singer)+動詞(is)+補語(popular)という文構造になっています。(b)は(a)の文に17-year-old、Korean、veryという3つの情報を付け加えただけなので、元の文構造は変わりません。このように文が長くなっても元の骨組みとなっている文構造が理解できるようになることが今後の英語学習にとても重要です。

 

語彙学習は、品詞の区別をしっかりと!

この文構造を理解するのに重要なのが品詞の理解です。英文中にあるすべての品詞を理解するのが理想的ではありますが、中には区別の難しい品詞もありますので、まず文構造を理解する上で重要となってくる、比較的簡単な名詞(代名詞)と動詞と形容詞を先に抑えておくといいでしょう。主語はその文が表す主体ですから、必ず名詞が含まれています。例文(a)でいえば、singerが名詞です。動詞はその主体が行う動作や、様子あるいは状態を表す部分です。例文(a)ではisが動詞ですが、この動詞は、この文の主体が補語の表す様子や状態であるという意味を表します。つまりsinger=popularという意味になります。そして、補語はpopularという形容詞で、名詞を詳しく説明する役割をします。この例文の場合、singerがどのようなsingerなのかを説明しています。このように、文のそれぞれの構成部分には名詞、動詞、形容詞があるので、品詞を理解すると文構造が理解しやすくなり、後に文を作るときに役立ちます。

この品詞の学習は語彙学習と同時進行するといいでしょう。新しい単語を学ぶときには、意味がわかれば、その単語の品詞がわかる場合もありますが、慣れていないと意味がわかっても品詞が何かわからないことがよくあります。しかし、成人が英語学習するのであれば、品詞を理解して、文構造を捉えるのが効率的です。たとえば、例文(a)や(b)の文構造を真似して、singerの代わりに別の名詞building、動詞はそのままis、popularの代わりに別の形容詞newと、同じ品詞の別の単語をはめ込むことで、The building is new.(その建物は新しい。)というように別の文ができます。したがって、語彙の学習、品詞の学習、文構造の学習は同時進行で行うのがおススメです。

 

まずは基本の1000語を身につけよう!

学習する語彙の量ですが、簡単な会話をすることを目標にする場合、基本単語1000語をしっかり学習するといいでしょう。この1000語が、ネイティブが話すときに使用する全単語のうち約85%を占めているといわれています。普段話すときには難しい単語を使いませんので、この基本単語1000語が非常に重要です。英語に自信のない人でも、a, the, in, on, andなど知っている単語は相当数あるので、それを含めて1000語の学習を目標にしましょう。この基本単語が分かるようになると、文法学習の際に登場する例文の意味も少しずつ理解できるようになるので、文法学習にも役立ちます。もちろん、1000語が覚えられたら、2000語にチャレンジしてみてください。2000語が使いこなせるようになると、日常会話のための語彙は十分だといえます。

語彙学習は、例文や会話文などで登場して知らなった単語を、単語帳あるいは単語カードに書いておいて、いつでも復習できるようにしておくのがベストです。語彙学習には時間を空けた反復学習が不可欠です。つい先ほど学習した新しい単語を繰り返し学習するのではなく、次の日に再度学習するなど、時間を空けて反復学習することが語彙学習には重要です。単語帳や単語カードを作っておくと、ちょっとした隙間時間に以前に学習した語彙を復習できるので活用してみてください。

このように身につけた基本的な文構造、語彙、品詞の知識は、これまで買っても続かなかった英会話の教材をより理解するのに役立つはずです。まずはじっくり基礎を固めてから、改めて会話のテキストを見てみるのはいかがでしょうか。

 


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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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