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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.43 「英語の勉強に向いている人、向いていない人の違いは?」、Q.44「英語の勉強におすすめの映画は?」

この連載では、英語学習に悩みを抱える読者の方のご質問に、横本先生が懇切丁寧にお答えしていきます。先生へのご質問はこちらから。お気軽にご応募ください。
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Q.43 「英語の勉強に向いている人、向いていない人の違いは?」

 英語を話すことの出来る友達や知り合いを見ていると、みんな好奇心旺盛というか、元気な人が多いような気がしていて、英語をしゃべれる人で物静かな人や人として落ち着いている人は少ないような気がしています。おそらくは私自身の偏見に間違いないのですが、英語の勉強に向いている、あるいは向いていない人には何かしら性格的な違いがあるのでしょうか?

 

英語学習に向いている性格=学習時間を確保するのが得意な性格

 英語を流暢に話す人は比較的朗らかな方が多いですよね。それは決して偏見というわけではありません。他人に見られている場面でも英語で話すことができる人だけを普段見ているので、そのように感じるのは当然だと思います。

 実は、個々の性格と言語習得については実は広く研究されています。結論からいうと、個々の性格そのものが言語学習に直接影響を与えることはあまりないようです。つまり、外向的で人との関わりを得意とする活動的な人も、内向的でひとりで学習するのが得意で物静かな人も、英語学習においては差があるとは言えません。

 しかし、「個々の性格が、言語習得に間接的に影響を与える可能性はある」と考えられます。英語は言語なので、基本的には、言語を使用した時間に比例して上達します。話す学習時間と読む学習時間を比較した場合、話す学習時間の長い学習者は必然的に話すことが上達し、読むことはそれほどでもなくなります。逆に、読む学習時間が長い学習者は読む力が上達し、話す力はそれほど上達しないといえます。

 ここでとても重要なのは、この学習時間の比較です。日本にいながら英語学習をする場合、読む練習時間を確保することはそれほど難しくありません。教材、雑誌、本、SNSなど、読もうと思えば、いくらでも読むものを探すのはそれほど難しくありませんし、言ってみれば誰でも読む題材を探すことができますから、読む時間を確保するのは比較的簡単です。

 それに比べ、話す練習時間を確保するのは、それほど簡単ではありません。ひとりでも話す練習ができる、すぐに話す相手を探すことができる、誰とでも話すことができるなど、誰にでもできない性格的要素が大きくなります。つまり、話すことを目的とする英語学習に必要な環境を整えるのには、性格的に向いている人がいて、向いていない人は努力でその差を埋めなければ、同量の話すための学習時間を確保できないということです。

 話すことを得意としない内向的な学習者にとっては、一人で静かに読む環境を作り出し、読み書きの力を磨くのは比較的容易ですが、話す環境を自ら整えるのは得意ではないので、話す力に関しては、外向的な学習者と差が出てきてしまいます。

 英語学習の成果は学習環境の影響を強く受けます。なので自分の殻を少しだけ破って、学習環境を整えることに力を入れてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

Q.44「英語の勉強におすすめの映画はありますか?」

 横本先生、こんにちは。わたしは大学の英文科に進むくらい英語が好きなえりこと言います。最近は仕事が忙しくて、英語の勉強が疎かになっているのですが、週末に映画館や動画配信アプリで映画を見るのが楽しみで、映画を見ながら上手く英語の勉強も出来ないかなと思っています。そこで、英語の勉強におすすめの映画や映画を使った英語の勉強法などがあれば、教えて頂きたいです。宜しくお願いします。(えりこ、30歳、会社員)

 

映像を通して強弱、抑揚、表情の学習をしましょう!

 英語が好きというのは何にも代え難いモチベーションですね。お仕事でお忙しい中、楽しみながら英語学習を続けたい気持ちがとても嬉しいです。私はあまり映画を観てこなかったので、英語学習におススメの映画というとあまり頭に浮かぶ作品がありません。そこで、代わりにドラマで代用させてください。

 基本的には、ドラマなどは主要登場人物や設定場面が固定されていることが多いので、どの作品も英語学習に向いているとは思います。英語を聞き取る際には、知らない語彙が登場することが原因で聞き取れないことがよくあります。実はその中に、聞いたことのない人物名や地名、会社名などが含まれていて、それを知らない単語として認識してしまうので、聞き取りが難しくなってしまいます。主要人物や場面が繰り返し登場するドラマでは、固有名詞に振り回されずに、効率よく英語表現の学習ができます。

 ドラマを見て学習できるのは、語彙学習だけではありません。是非活用していただきたいのは発音学習です。特に感情表現やシチュエーションによって話すスピードを変えることがあり、同じ英語表現でも言い方によって意味を変えることもあります。それぞれの場面で話されている英語表現の学習だけではなくて、その英語表現をどのように話しているのか、イントネーションやスピード、強弱、表情などに注目すると、自然に英語を話すための学習になります。

 たとえば、人気コメディのFriendsにこんなシーンがあります。モニカとチャンドラーが付き合い始めたことを、フィービーとレイチェルにバレていることを知っていることにまだ気づいていないだとか、それを知っていることにまだ気づいていないという、お互いがどこまで知っているかを競い合う場面があります。そこで、モニカの

“They don’t know that we know that they know.”

 では、They don’t knowを全体的に強くゆっくり、that we knowではweをthat they knowではtheyを強く発音しています。後のフィービーの“They don’t know that we know they know we know.”では、They don’t knowまではやはり比較的ゆっくり強調して、その後のthat we know they know we knowは比較的すばやくリズムよく発音されています。

 このように、同じ単語の繰り返しでも、メインのメッセージであるThey don’t knowを強調のためにゆっくりと、「誰が」は重要なので、抑揚をつけて話すなど、発音という観点ではとても勉強になります。スピード、抑揚などの学習には、繰り返し観ることのできる海外ドラマは大変おススメですので、是非活用してみてください。

 

 

 

 

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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 特任准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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