Q.145「毎日の学習モチベーションが続かない。どうすればよいか?」
英語の勉強は毎日したほうが良いと言われていますが、なかなか続けられず、どうしたものかと思っています。TOEICは400点代後半なのですが、英語を使う仕事に転職したいと思っていて、最低でも700点は欲しいと思っています。毎日、通勤の時に問題集の音声を聞いたりすることもありますが、机に向かうのは時間的にも気持ち的にも厳しいものがあります。もし毎日続けるためのコツがあれば教えていただきたいです。(だんご、24歳、会社員)
達成可能な目標を立て、ルーティン化して継続を!
仕事をしながらの英語学習は、日々の疲れもあって、毎日継続するのは簡単ではありません。しかし、英語学習には継続学習がとても重要であり、どうにかして毎日英語に触れる時間を作る必要があります。
机に向かって学習する時間を毎日確保するのが難しいという点については、どうにかして時間を捻出するしかありません。できるだけ仕事を定時で終わらせる、同僚や友人と交流する時間を減らすなど、英語学習とは別のところでの努力が必要となります。実際に私が留学のために英語学習をしていた時には、出願書類の締め切りに間に合わせなければならなかったため、友人にも同僚にもそのことを理解してもらった上で、仕事をできるだけ定時で終わらせて、友人との食事などの誘いはほとんど断っていました。留学費用を捻出するために副業をしていたので、帰宅はいつも22時過ぎという生活でした。そうした中で、毎日欠かさず机に向かうという生活を1年ほど続けましたが、とても苦痛でした。なかなか単語が覚えられず、泣きながら勉強する日も少なくありませんでした。時間の捻出には多少の犠牲が必要かと思いますが、英語を使う仕事に転職するという目標を達成するのに、何をどこまで犠牲にできるのかを、今一度考えてみるのもいいと思います。
転職するのにまだ時間的な猶予があるのであれば、何かを犠牲にしてまで無理して英語学習に時間を割くのは、あまり賢明ではないかもしれません。せっかく苦労して身につけた英語が嫌いになってしまう可能性もありますから、そうなってしまっては元も子もありません。とりわけ、いつまでにTOEICの目標スコアを達成しなければならない、いつまでに転職しなければならない、といった期限がないようであれば、将来仕事で英語を使用する際に、英語を使用することが精神的な負担にならずに済むように、今は少しでも楽しみながら英語学習を続けていくのがベストです
そして何よりご紹介したいのが、毎日英語学習を続けられるコツについてです。まず、とても大切なのはモチベーションです。そしてモチベーションと関連するものとして大事なのが、明確な目標設定です。目標を達成するまでに小さな目標達成をつくり達成感を実感することも重要です。そして、学習をルーティン化することも欠かせません。これらについて一つずつもう少し詳しく説明させてください。
「どうしてもならなければならない自分像」を探そう!
今回のご相談内容の場合、英語を使う仕事に転職したいという気持ちが、モチベーションに大きく関わります。ですが、ただ「英語を使う仕事」というだけは漠然としていてあまり具体的ではないので、もう少しイメージをはっきりさせるといいでしょう。その将来の仕事において、どのようにして英語を使用しているのかをできるだけ具体的にイメージ化することが非常に重要です。海外の取引先とメールでやり取りするような仕事をしたいのであれば、そうした仕事をこなす自分自身のイメージをしっかり持つことが重要です。また、海外の展示会などで自社製品の説明をするような仕事をしたいのなら、広い展示会場で外国籍の顧客にたいして自信をもって製品説明をしている自分の姿を想像することが、モチベーションを持つためにも、維持するためにも重要な役割を果たします。是非、将来の自分がどのような業務を英語で行っているのか、具体的にイメージしてみてください。
イメージ化することで、自分の英語学習のモチベーションを確かめることはできますが、それを長期間維持できるか否かは、そのモチベーションの強さによります。たとえば、社内のコミュニケーションはすべて英語で行う会社で働いている自分をイメージ化したとします。この将来の自分像が、たとえば、「どうしてもならなければならない自分像」なのか「なりたい自分像」なのか「なれればいい自分像」なのかというように、実現する意欲の強さを考えてみてください。当然ですが、「どうしてもならなければならない自分像」が最も強いモチベーションになります。できれば、そのような自分像を探すことをおすすめします。
冒頭に紹介した大学院留学を目指した頃の私の自分像は、この「どうしてもならなければならない自分像」でした。そのため、苦痛とさえ感じた英語学習も何とか継続することができました。転職先を探す際に、仕事内容や条件も含めて、どうしてもこの仕事をしなければならないと思えるような仕事をみつけて、そこで仕事をしている自分像をイメージ化できれば、それは英語学習にとって大きな強みとなります。
明確で達成可能な期限と目標を立てる
もちろん、そのような理想の仕事に出会わない場合もあります。転職先を探しても、そこまで強い情熱を持ってやりたい仕事が見つかるとは限りません。それでも、モチベーションを維持する方法があります。それは明確な目標を作ることです。大半の英語学習者は、受験、就職、転職、昇格、昇給、といった、英語力を高めることで得られる別の目標があって英語学習をしています。言い換えると、学習者の多くは、英語学習そのものが楽しくて毎日英語学習をしたいと思っているわけではなく、何かの目標を達成するために英語が必要だから学習しているのです。
TOEIC700点というのは明確な目標ではありますが、それと同様にとても重要なのが、達成可能な目標を立てることと、期限を設けることです。まず、達成可能な目標についてですが、現在TOEICの400点台後半であれば、ずばり600点を目標にするといいでしょう。最終目的は転職に有利な700点だということはよくわかりますが、その前に600点を目標に学習して、それを達成したら次は700点を目標とすることの方がモチベーションの維持に役立ちます。600点ならそれほど時間もかけずに達成できることも大きなポイントです。
達成感に関連することで重要なことがもうひとつあります。それは、TOEICというテストが、レベルに関係なく全員が同じテストを受験するという特殊なテストだということです。想像してみるとわかると思いますが、980点を取得した人と990点を取得した人には英語力に差がありますが、TOEICにはその差を明らかにするための問題が含まれているということを忘れてはいけません。目標である700点を取得できるレベルに達しても、全体の3割程度の問題は正解できないことになります。現在400点台ということはTOEICの問題のうち理解できるのはおよそ半分です。なかなか理解できない英文を読んだり、聞いたりするのは、理解できたという達成感がなく、精神的にかなり負担です。レベルに関係なく使用できるように作られている公式問題集などは、現在のレベルを知るためや、本番さながらの練習をするのに適していますが、学習の教材として使用するには少し難し過ぎるかもしれません。600点という達成可能な目標を立てたら、600点を目標とした教材を使用して、問題が解けるようになる成功体験をできるだけ多く経験してください。この小さな達成感の積み重ねが継続学習に大きく関わります。
どれだけ成功体験を繰り返しても人間ですから、これを長く続けるのは至難の業です。そこで役立つのが期限です。現在のレベルから600点を目標とするなら3か月あれば十分だと考えられます。今から3か月間はとにかく苦しくても英語学習をできるだけ毎日続けてみましょう。3か月くらいですと、多少苦労しても続けられると思います。ときにパンクしそうになる日もありますから、週に1日くらいは心の休息だと割り切って休んでも構いませんが、600点を達成するまでの3か月間は、やると決めたメニューはできるだけやりきるようにしましょう。
英語学習をルーティン化する
外国語学習に長けた人たちが共通して薦めるのが、短時間でもいいから毎日学習するということです。1日5分間だけしか学習できない日や、単語を一つだけ覚えたという日があっても構いませんので、毎日続けましょう。そして、それを継続するのに役立つのがルーティン化です。通勤電車の中での学習はとてもいい方法だと思います。あれだけ他人に囲まれていても誰にも邪魔されませんし、通勤に要する時間にもよりますが、片道30分間ほどあれば平日の学習は通勤時間のみで十分です。
そして通勤時間におすすめなのは、語彙学習です。TOEICに頻繁に登場する語彙ばかりを扱った教材があるので、そちらを使用して、語彙力を上げていきましょう。その際には音声を使用して学習することを忘れずに行ってください。特に日本人は、読んで理解できる語彙力と聞いて理解できる語彙力にかなりの差があります。語彙学習では音声を聞いて理解できる語彙を増やすこともとても重要です。TOEICに特化した教材を使用して語彙学習をすれば、実際に問題を解く際に、聞いたり、読んだりして理解できる英文が増えてきますから、ご自身の成長を実感できると思います。さらに、通勤時間を利用してできるのはアプリです。TOEIC学習用のアプリがかなりあります。アプリでは語彙だけでなく、リスニング問題もリーディング問題も練習できます。レビューなどを参考に、ご自身のレベルに合った学習ができそうなアプリを利用するのも継続学習に役立つと思います。
そして、休日は机に向かう時間を設定したいので、たとえば昼食前の2時間、入浴前の2時間というように、英語学習をする時間帯を別の活動と結び付けて決めてしまうのがルーティン化には有効的です。ここで2時間というのを例に挙げましたが、それには理由があります。TOEICの本番では、2時間集中して英文を読んだり聞いたりし続ける持久力が必要になるので、休日の学習時間は2時間以上を設定することを強くおススメします。問題集をひと通り解くのに2時間かかりますから、たとえば、土曜には問題を解くのに2時間、日曜には不正解だった箇所を学習するのに2時間というようにするのが現実的だと思います。
仕事をしながら、毎日机に向かって勉強するというのは簡単ではありませんから、将来の自分像をしっかりイメージ化して、明確な目標を立てたら、平日は通勤中に語彙学習とアプリで学習、週末は机に向かって実践問題で学習としてはいかがでしょうか。
★編集部より★
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