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あさひてらすの詩のてらす

珊珊と鳴りわたる8篇(26年8月)

今回はご投稿いただいた作品の中から8篇、お届けいたします。ぜひご一読ください。 


 

 珊珊と鳴りわたる8篇

・MELODIES

・軸

・台本にない日

・スマホの効用

・かき氷

・此処で書けるものなんて

・戦い

・14の感傷

 

MELODIES

ハッピー詩人鏡ミラー文志

 

音が連続して加速度をつけ、反復されるとHIGHになる

その一連の流れ、とてもSMOOTH.

 

歌が連続して復唱され、倍増されるとFUNになる

その一連の流れ、とてもSTRONG

 

山が連続して聳え立ち、一つに纏められるとRANGEになる

その一連の流れ、とてもMAGESTIC.

 

ものが連続して連結し、繋がり続けるとWORLDになる

その一連の流れ、とてもBEAUTIFUL.

 

蟻が連続して並び歩き、自分達の住処を見つけるとCOLONYになる

その一連の流れ、とてもSWEET.

 

文字が連続して並べられ、それが意味を成すとWORDになる

その一連の流れ、とてもELEGANT

 

草笛螢夢

 

回る周り続けていないと

私は私でないと 勝手に思い込んで

天を眺め 空の流れも

多分同じなんだと決めつけていた

 

滑りやすく永く居れる場所探し

風に揺れ

地震に震え

人に問い続け

本を探し回り

知の神に縋り

 

生き着けた場所は

力尽きて 結局は元の場所

 

気づきの悪い

自分の悪い癖は相変わらずだ

 

もっと身軽に

もっと軽やかに

もっとしなやかに

力が尽きるのなら そこで立ち止まり

また 回る周り続け

自分にとって 何が必要で

生きていくのに 足りないものの

大切なものを見つけてみたい 

 

台本にない日

南野 すみれ

 

市民センターの自動ドアを出たところで

着信音

 

構えることをしないで受けた

電話

助走もなしで一気に

着地点に立たされた

 

台本は

入院することにしました

と前置きがあって

それから本番にいくと

勝手に書き上げていた

緩んだ日常

大暑の空

正午の光を遮る帽子を

左手にぶら下げたまま

電話に向かって何度も頷く

声は頭の頂点から

ふるえながら飛び出していく

 

覚悟はしていたから

台本にない一幕に

驚きはない

それなのに

カクカクカク

からだのなかが啼いている

 

呆けた顔で

帰る友人に手を振った 

 

スマホの効用

兎田一夜

 

肩こりがひどいとき、

片手にスマホを持ち、

各地方の天気予報に、

アクセスするうちに、

こりがやわらぎます。

 

指がつっぱねるとき、

片手にスマホを持ち、

お怒りのクレームの、

メールを打ちますと、

つっぱりがきえます。

 

肘の関節が痛むとき、

片手にスマホを持ち、

お気に入りポストへ、

いいねを押しますと、

関節がつながります。

 

胸の中が苦しいとき、

片手にスマホを持ち、

今の気持ちにそって、

綴るようにしますと、

涙があふれてきます。

 

スマホを片手に持ち、

眠れなくて辛いとき、

本体の側面をなぞり、

電源ボタンを長押し、

スリープとなります。

 

ぜひお試しください

 

 

かき氷

とし

 

屋台の列に並び

何味にするか真剣に悩んだあの頃

甘いイチゴ

爽やかなレモン

ちょっと気取ったブルーハワイ

王道のメロン

友達とお喋りしていても

頭の中ではイチゴとメロンが戦っている

腹に響く盆踊りの太鼓

行き交う人々の笑い声

香ばしいイカ焼きの煙

夜空に咲く大輪の花火

 

遠い夏の思い出を辿りながら

エアコンの効いた部屋で氷を削る

庭仕事の後の夏の定番

思い出という甘いシロップを添えて

 

此処で書けるものなんて

七海独

 

なんてやわらかな場所に、私たちは居るのだろう。

なんて星の綺麗な場所に、私たちは居るのだろう。

 

日が昇り、沈み、

月が孤独を癒し、春の風が吹き、

結局なんとかなると思える場所に、

私たちは居るのだ。

 

私たちの抱いている絶望など、悲しみなど、

路地裏に落ちている潰れた缶程度のものなのだろう。

 

此処はそんな場所なのだ。

私たちの居る此処は、地獄とは程遠い場所なのだ。

 

決して天国の真ん中ではないが、

少なくともその表面なのだ。

 

私たちが此処で書ける絶望は、

天使の涙のように美しいものだ。

私たちに、悪魔の微笑みは書けないのだ。

血まみれの歯をのぞかせる、悪魔の微笑みは書けないのだ。

 

だから私たちは、書かなければならない。

書き続けなければならない。

此処で書けるものなんて、

限られているのだから。

 

戦い 

ヒンヤ

 

殆ど飯が喉に通らぬであろう

 

灯は布で隠され

サイレンが響き

息すら許せない空気だ

 

虫が飛び回る夜に

またアイツはやって来たのか

いつやって来たのか

 

知らぬ間に

我らは息を潜めて

妙な連帯感を持たねばならぬのだ 

 

14の感傷  

倉橋謙介

 

踏切が開くのを待つ僕を

秋になった風は追い越していく

反響するサイレンの音が

奥まで沁みてきているよ

これ以上ないくらいの夕暮れ

からっぽの線路の先で

まだ夏服のままの君が

商店街を歩いていく

幻と記憶のあわい姿をみる

遠い昔の今日みたいな日

背が予想以上に伸びすぎて

足首までみえていた

丈の短いズボンを履いているのを

僕は初めて恥ずかしいと思ったんだ 

 

 

 

世話人たちの講評

平石貴樹より

MELODIES 
 反復と変化に妙味を見いだす、たしかに音楽的な手法ですね。
 
 読み終えて、タイトルにドキッとしました。
 
台本にない日
 実感とてもありますね。
 
スマホの効用
 なんかほんとに起こりそうですね。
 
かき氷
 見事な一作品と思います。
 
此処で書けるものなんて
 「此処」がどこなのかもうひとつわかりませんでした。
 
戦い
 戦争ぽいけど、よくわかりません。
 
14の感傷
 終2行の記憶はいかにも大切ですが...。

 

渡辺信二より

Melodies

各連2行で、全体が6連構成。大文字表記の英単語が各連2語ずつ使われています。それぞれの2行目に終止符を使うのかどうかに関して、判断が不明です。すでに日本語としてほぼ通用する英単語と、そうでないものとがあって、評価が難しい。

タイトルが「軸」ですが、これは、探究としての人生が主題なのでしょう。書き手は、第一連では、「軸」を回し続けることを求め、 第二連では、「軸」が「滑りやすく永く居れる場所探し」をしようとする。この変化が起こったのは、なぜなのか、気になる。なお、21行目と22行目で繰り返される「もの」にも、ちょっと戸惑う。

台本にない日

「この世はすべてひとつの舞台、男も女も人はみな役者にすぎない」というセリフがありました。20行目「台本にない一幕」が、この作品の中では、具体的に何を指すのだろうか、考え込んでしまいます。

スマホの効用

1行10字を基本とした1連5行の5連構成+最終連1行9字で構成される、全体26行の作品です。主題は、スマホによる身体的不調の解決でしょうか。第4連までは、第5連を除き、各連の第1行目が「・・・とき、」で始まり、抑えたユーモアが醸し出されています。

かき氷

かき氷をモチーフにして、過去の思い出が現在に蘇ります。多くの人が経験したか、通り過ぎたか、したことのある光景でしょう。

此処で書けるものなんて

書き手の「此処」は、とても大事な場所ですが、タイトルでは、その「此処」を卑下するような表現で示しています。その上で、「天使の涙のように美しいもの」を「此処」で書けるなら、それは、すごいことでしょう。ぜひとも、いつか拝見したい。

戦い

作者の意図とは違うかもしれないのですが、深読みが可能な作品です。非常に日常的なことを深刻に語っているのか、非常に深刻なことを日常的に語っているのか、表現の2重性を楽しむことができるように思えます。

14の感傷

「君」と「僕」の間にある越えられない境界を越えてゆくのが「風」ですね。「幻と記憶のあわい姿をみる」や「遠い昔の今日みたいな日」という詩的クリシェをうまく生かしている。振り返れば、「まだ夏服のままの君」が見えるのでしょう。

 

※千石英世氏のコメントは休載となります。ご了承ください。


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