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あさひてらすの詩のてらす

風鈴草と揺れる9編の詩(26年7月)

 今回はご投稿いただいた作品の中から9篇、お届けいたします。ぜひご一読ください。


  

風鈴草と揺れる9編の詩

・小さく可愛らしきもの

・詩

・遠征(家出

・僕のカエルはよく飛んだ

・悲しみは、止めどなく

・境界線を知ること

・あくまで変わらない私は、夏が好きだった。

・月も星もない夜

・過ぎゆくとき

 

小さく可愛らしきもの

とし  

 

ふと気づくと

緑の葉の下からニュッと花芽が出ていた

一つ 二つ 三つ 四つ

一つ 二つ 三つ 四つ

どうやら八つの花が咲くらしい

 

日を追うごとに膨らんでいく花芽達

重厚な葉に押し潰されないように

花芽の蔓をクリップで支柱に留める

 うん、立派。

心なしか花芽達も胸を張っているようだ

 

朝日を浴びて気持ち良さそうに佇むその姿

デビュタントになる日を夢見る少女のように

艶やかに咲き誇る直前の清楚な美

 

ヒンヤ

 

洗い立ての

朝の日差しと

戯れている

 

今日一日が

寄り添ってくる

 

嘘色のシャツは

羽織らないでおこう

 

詩とは

渇望なのかもしれない

 

無意識に

思った言葉を

詩として編むのだ

 

出来上がっても

完璧ではない

 

生み出された瞬間に

抜け殻の自分を

曝け出すのだから

 

生きている限り

詩を編み続けよう

 

それこそが

生きることなのだから

 

遠征(家出)

倉橋謙介

 

僕はよく知らない街の

炎天下で伸びきった国道を

永遠の手前まで歩いていって

やたらと広い駐車場のある

ゲームショップで

お目当てとしたソフトを買って

メンバーズカードまで

言われるままに作ったよ

聞いたことのないチェーン店さ

次の日の朝

ビジネスホテルの

書物机の真ん中に置いたまま

部屋を出て行こうと思っていたけど

自分の街に帰って

無関心な人達に紛れて生きていく為に

持っていくことに決めたんだ

僕がどこにいても

何かの一員にもなれる証に

 

 

僕のカエルはよく飛んだ

倉橋謙介

 

夏の終わりの昼下がり

僕はベッドでひとり

牛乳飲みすぎて七転八倒

ずっと頭から離れないのは

お祭り金魚すくい

浴衣の袖を少しまくって

ポイを持つ君の白くて細い腕

僕の心は迷うことなく

逃げる金魚を応援しつづけていた

君が着ていた浴衣の柄は

どんなだったかな

焼き付けた後ろ姿だけじゃ

上手く思い出せないよ

机の上に放り投げた

くじ引きでもらった

カエルのおもちゃと目が合った

あれもこれも夢じゃないなら

次に会ったら何て言おうか

今から考えておかないと

 

悲しみは、止めどなく

鏡ミラー文志

 

バカな親に、負けた

狂った兄に、負けた

いじめっ子たちに、負けた

 

そして、今日がある

しかし、明日もある

 

優しさを、知った

そして厳しさも、知った

それを教えてくれたのも、沢山の嫌な人たちだった

 

そして、笑顔がある

憎しみとともに、怒りもある

 

寂しさに、泣けた

そう、悲しくて、泣けた

 

人生は、一度きり

そして最後は、たった一人きりだ

 

境界線を知ること

草笛螢夢

 

有形

無形

時空

そして

精神の境界線を

悪戯に飛び越え

脅かす事にならない様

注意しいるが つい 

歯止めが利かずに

緩くなっていく

 

あなたとの生きていく

時間の距離は

私のわがままに左右され

いつも

問われる生き方は

答えを持たない回答書

 

あくまで変わらない私は、夏が好きだった。

yasui 

 

戻ることを許されない旅路

行き先には来た道と同じ響き雪路が待つ

随分と長い間、人と会っていない

身体を委ねられる場所を探している

 

山間には人の道が密かに伸びている

道の先には清らかなせせらぎ

高尚な言葉なんて持たないふる里は

暮らしと共に棲む、木琴の音に童謡を歌う

 

まだ離れたくない心残りを探していた

秘密基地を見つけては、ステップを踊ってみせる

すると心三丁目の筋肉がすこしだけほどける

頭の中どこかがまどろんで、甘味を頬張ったよう

 

求める心があくまで求められる

逃れられない過ちを映す影法師とのお遊び

何も変わらない場所で、私は何も変わらない

許しのない旅路に病床の友を訪ねた

 

求めることをあくまで求められる

何も変わらない場所では、誰も何も変わらない

何も変わらない場所で相変わらず、私も何も変わらない

 

月も星もない夜

南野すみれ

 

その夜森は

天上から砂が降ってきた

あなたに

其処が居場所ではない

と気づかされ

失望という屍が

転がった日

 

ジャリジャリ

砂を噛む

吐いても吐いても

砂は落ちてくる

月も星もない夜に 私は

向かう場所を見つけきれない

立ち竦むなと声がするのに

同じ場所をぐるぐる回っている

足首が砂に埋まる

森が下から消えていく

陽が昇る時はくるだろうか

 

五月は八人の誕生日を祝福した

のに

声をかけるにはいまは遠すぎる

印をつけたカレンダーが

意味をもたない数字になって去っていった

時間も螺旋状に落ちていく

私ひとりを置いて

世界は移動している

 

砂が腰まできた

森が壊れていく

 

過ぎゆくとき

mt

 

世界が君に追いついて横顔を冬のように温めようとしても、君の歩幅は少し前を向いて、その優しさには気づかない。

数羽のスズメがついばむそれぞれの未来はほんの少し、

 

太陽はゆっくりと風を暖めて背中を撫でようとつとめたが、燕の燕尾が横切って消えた。

ひまわりと朝顔が微笑んでも、君にはわからない。

カッコウが夏を告げている間は少しだけ暖かく、色のない涙は輝いている。

不意に右胸を切り裂かれたように百舌鳥が笑う時、我に返り、

夜空に漂う白い声を見て失われた秒針を探す。

金星と同じ列を白鳥がゆらめきながらやってきた。そんなふうに自分を失う君を見つめながら、気付けない優しさが柊の葉をつたって化石にたどり着く。

 

永遠とはそういうものなのか、これからもきっとわからない。

 

世話人たちの講評

平石貴樹より

小さく可愛らしきもの

 じつに共感いたします。

 だいたい正解に近いように私も思います。

遠征(家出)

 体験でしょうか。実感あります。

僕のカエルはよく飛んだ

 これも実感があふれていますね。うまい。

悲しみは、止めどなく

 御意ですが、そんなに人生を総括ばかりしなくても、と思います。

境界線を知ること

 不安定な日本語の魅力? でしょうか。

あくまで変わらない私は、夏が好きだった

 変わらないということの暖かさを感じました。

月も星もない夜

 いやな毎日ですね。

過ぎゆくとき

 なんか現在時刻がよくわからなくてむずかしかったです。

 

 

渡辺信二より

小さく可愛らしきもの

花芽が花開くのを待つ気持ちがよく出ています。なお、デビュタントですが、すぐに読者に意味が届くでしょうか。

<詩とは/渇望>(8~9)という表現が、とても、良い。ただ気になるのは、その直後、<無意識に/思った言葉を/詩として編む>(10~12)という表現とは、相容れない面があるだろう。のどが渇いた人が水を激しく欲するように、渇望とは、切実に、あるいは心から、何を、強く望むのか、わかっているはずだから。

遠征(家出)

多分、<遠征(家出)>した理由が暗示されていたなら、<何かの一員にもなれる証>が欲しい理由も、より明確に伝わるでしょう。あるいは、タイトルを<メンバーズカード>にする方がいいかも。<置いたまま>(12) って、何を? と読者に全体を読みなおさせるのは、作者の意図なのだろうかどうか、ちょっと疑問です。

僕のカエルはよく飛んだ

タイトルが面白いし、「君」との距離感ともマッチしているように読みました。14-15行目の、連体修飾節(英語で言うところの従属節)は、ちょっと説明的で散文的に響く。

悲しみは、止めどなく

詩のテーマやメセージはよくわかる。箇条書き風なのが、詩としてどうだろうか。タイトルからは、「悲しみ」がテーマのように思えるが、箇条書きのゆえに、本文中では、「優しさ」「厳しさ」「笑顔」「憎しみ」「怒り」「寂しさ」などが羅列されてゆく。その一つ一つが、多分、新しい作品となるのでしょう。

境界線を知ること

多分、作者は、何を主張したいのか、わかっているはずです。でも、読者としては、もう少し、具体的な描写が欲しいところです。11-12行目、助詞「との」の係り方に戸惑い、また、「時間の距離」に躓く。15-16行目も、気の利いた表現のように思えるが、でも、何か今一つ、もどかしい。

あくまで変わらない私は、夏が好きだった。

「夏が好き」な作者が、秘めた事柄への断片的な仄めかしでもって作品を構成しているように見える。おそらく、タイトルに句読点は使わないでしょう。16行目は、さらに、展開できそうな可能性を秘めている。

月も星もない夜

タイトルも含めて、喪失と孤独が、砂に埋もれていく焦燥感と共に、幻想的に描かれている。なお、このままだと、砂と森の私の関係が掴みにくい。「天上から砂が降ってきた」(2)、「砂が腰まできた」(27)などは、私が<砂に埋もれていく>姿を想像させるが、「森が下から消えていく」(17)「森が壊れていく」(28)ともあるので、森そのものも下から消えるのか、空間的な映像の結び方に戸惑う。また、「五月は八人の~」(19~21)が唐突。極めて具体的で現実的な日常の数字なので、全体の幻想的な描写と相容れないようにみえる。    

過ぎゆくとき

「君」が「優しさ」に気づかず、いたずらに時が「過ぎゆく」、それがひょっとして「永遠」なのかどうか、・・・というのが、この作品の主題と意図だと推測する。また、素材として、自然の生物や宇宙の事象を利用している。読者としては、「君」とはどんな人なのか、なぜ、作者が気にかけるのか、永遠がなぜ問題なのか、など、もう少し明確だとありがたい。詩としては、長い行が多い。

 

 

※千石英世氏のコメントは休載となります。ご了承ください。


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