靉靉にゆれる7篇の詩(26年10月)
今回はご投稿いただいた作品の中から7篇、お届けいたします。ぜひご一読ください。
|
・おじぎ草 ・MUSIC ・遠くならない記憶 ・一つ ・ランカスターの夜 ・九月の雨 ・ノストラダムスの為に |
|
おじぎ草 草笛螢夢
生きている様に感じるという表現は 当て嵌まらないかもしれないけど その心模様を 何時も密かに秘め 思い人が そっと通り過ぎるのを見送る
思い人からの優しく撫でられる その瞬間が 一番の 待ち遠しい一時 君は頬を淡く赤らめ ふと 心と真逆に 葉っぱを全て閉じて 誤解されてしまった
いつか いつの日か 判って貰いたい君の気持ちは 今日も撫でられて貰えるのを じっと待ち続けている |
|
MUSIC ハッピー詩人鏡ミラー文志
愛は、バイオリン その体内を駆け巡るリズム 僕は、メロメロさ
愛は、バイオレンス その粘膜を突き破るパワー 脳が、ヘロヘロさ
愛は、サイクリング 二人睦まじく跨るバイシクル 頭、クラクラさ
まるで、マーガリン 心グラグラとろけるチーズの海 船で、ゆらゆらさ
愛は、ハーモニー その宴とお祭り、カーニヴァル 汗で、ムラムラさ |
|
遠くならない記憶 南野 すみれ
君が忘れていたらいい と 心底思っている * やっと泣けると出た声 ドアの向こうで かすかに ふるえながら 勢いよく飛び込んで 強く抱きしめた しゃくりあげて泣きじゃくる君は 四方八方に手を広げて 母をさがしまわる 母の胸の中に居るのに ハハヲツカメズ ヒトリノコサレタキョウフを 強烈な棘で 全身から放ってきた * 起こそうか でもこんなに良く寝ている 午後二時少し前 寝顔を見ながらまだ迷っていた 出かける時間は迫っている その日 三歳になったばかりの君を置いて 私は玄関の鍵を閉めた ―のだった
何事もなかった ―運が良かった 無事だった四十年前の日を 母はときどき。 君の奥底で化石のように。 傷口が残っているのではないかと。 |

|
一つ m t
一つの花が咲き終わり、季節が動き出す。 土に帰る花弁は無口で穏やかかどうかはこの先の夢。永遠に続く彼方の記憶はどこかに閉じ込められ、新しく、そして過去から連続する古い細胞は芽を吹き、全てが初めてのような錯覚をどこかに隠して進む。 雨、朝の光、晴れた空の雲、夜の静寂、不意に感じる覚えのあるサインに、いつかどこかで出合うまで少し悲しい。 |
|
ランカスターの夜 とし
午前1時39分 ふと目が覚めた
虫の声に誘われるように外へ出ると うっすらとかかる霧のベール 濃い闇の向こうにぼうっと佇む街灯
空には広がっているはずの星空と 闇の中で積極的に活動している動物達 道の向こうから聞こえる悲しげな馬のいななき
懐中電灯の灯りを頼りに前へ進む ザクザクとなる足音だけが 自分は確かにここにいるのだという 安心感を与えてくれる |
|
九月の雨 ヒンヤ
キミが金魚に見えるなんて こんな九月の雨の日には言いたくない 雨傘が落ち着かない 覚醒的に 衰退的に 雨の日に 僕の気持ちは 溶け込んでゆく 通り過ぎる人達は 水たまりも見えぬほど 足早に今日を過ぎ去ろうとしている 語れぬモノが無い人ほど 無神経に振る舞おうとする こんな世の中において 今日も僕は傘を握りしめている |
|
ノストラダムスの為に 倉橋謙介
体育館裏の草むらに 3人各々で いちばん大事なものを クッキー缶に入れて 埋めるつもりだったんだけど モグラの穴が見つかったので やめにした 漫画つきのノートや なぞなぞの小さな本に ロケットえんぴつが3本 お互い出しあって すぐに思った 4番目くらいの宝物たちでも それなりに好きなところが 今になって見つかってきたし 鳴き声も聞こえた気がしたし 今日は風が冷たくて寒いし 早く家に帰って なぞなぞやりながら 新小岩にもモグラがいると お母さんに教えてあげよう |

世話人たちの講評
千石英世より
おじぎ草
きれいな恋歌です。「その」という指示語どうでしょう。なくてもいいかも。詩行にキレがでるかも。
MUSIC
5連の詩です。4連めの出だしに「愛は」を反復するのはどうですか。詩行のはこびがそろうような気がします。
遠くならない記憶
最終行、つづけて文意をととのえるのはどうですか。書けなかったということを書くためにかかなかったのだとしても、仮の詩行ででもいいから、平凡な詩行ででもいいから、詩の声を落ち着かせると伝わってくるものがよりしかと伝わってくるようにおもいました。
一つ
最後の「不意に感じる覚えのあるサイン」、ここがいいですね。わかるような気がします。
ランカスターの夜
落ち着いた描写に好感します。馬がいる場所、闇の中の動物たち、これらがいる環境の説明があってもよかった。重たくなるので避けたのでしょうが、簡潔に読者に情報をあたえておくと伝わるものがぐっと深まるような。
九月の雨
簡潔で伝わってくるものがすっと伝わってきます。
ノストラダムスの為に
面白い詩ですね。かるみがあって、ほのかな情感があって、好感します。
平石貴樹より
おじぎ草
あわい恋心ですね。ときどき日本語がおかしいのはわざとでしょうか?
MUSIC
楽しい音遊びです。
遠くならない記憶
こういうこと、ありますよね、ほんと!
一つ
季節を微分した詩ですね、
ランカスターの夜
続きがないとちょっと…。
九月の雨
後半は共感ですが、1行目がわかりにくい!
ノストラダムスの為に
少年時代の思い出でしょうか。すばらしいです。
渡辺信二より
おじぎ草
おじぎ草を擬人化して、「君」と呼びかけ、「思い人」の接近を待ちつつ、その接近があれば、拒絶する仕草で誤解される様子が描かれています。この「判って貰いたい君」は、多分、じぶんの反射的反応が「誤解され」ることを判っているのでしょうね。なお、科学的に言うと、葉が閉じるのは、虫害防御高速運動であるとする研究があります。
MUSIC
この作品は、何か楽器のための歌詞へと向かっているのかもしれません。僕>脳>サイクリング>頭>マーガリン>チーズ>船>カーニヴァル>汗、という言葉やイメージの連鎖がもっと連関性を持つと、さらに、しっくりと読者の腑に落ちるように思えます。
遠くならない記憶
今から40年前だとすると、1986年なので、昭和末期の話ですね。「母をさがしまわる/母の胸の中に居るのに」の2行が特に響きます。もしも、「午後二時」が「午前二時」なら、全く別の話になるのだろうなと想像します。カタカナ表記や最終3行の3つの句点が効果的です。
一つ
この作品は、散文詩と言えよう。改行によるリズムはないが、言葉の詩的な跳躍と、しっかりしたイメージの連鎖。確かに、過去でもあり未来でもあるような記憶は、ありますね。
ランカスターの夜
日本の古い言い方なら丑三つ時の前後に、目が覚めて、霧の中、懐中電灯を頼りに外を歩くと言う設定です。「ザクザクとなる足音」からは、いろいろな情景が考えられるので、「安心感」で読者が納得するには、なぜ今頃、外を歩くのか、暗示でもいいから、もう少し、言葉がほしい。また、タイトルの「ランカスター」も、もう少し、生かしてほしい。
九月の雨
「金魚」なのですね。発想が面白い。「キミ」と「僕」の表記上のバランスの悪さがチグハグさを示唆して、「語れぬモノ」と、握りしめる「傘」へと広がり、その落差を、「九月の雨」が濡らしている。
ノストラダムスの為に
タイトルと本文の関係が謎めいている。ノストラダムスの大予言が日本で大ブームになったのは、1973年出版の解釈訳「1999年7月に恐怖の大王が降臨して人類が滅亡する」以降だから、このエピソード自体は、1999年7月以前のことなのだろうか。子供の日常が大予言に勝ると読める。なお、モグラも鳴くらしい。


