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教えて、先生!英語学習お悩み相談室

Q.149「人前で上手に英語を話すために」

こんにちは。Speakingの練習方法について質問させて頂きます。私は人前で話すことが嫌いです。日本語でも話す時に口ごもってしまって、流暢に話すことができません。しかし、NHK等の同時通訳の方の英語を聴き、どうやったらあのように話すことができるのかと思うようになりました。良い練習法があればご教示頂きたく、宜しくお願い致します。60歳を過ぎた高齢ではありますが、挑戦することは継続したいと考えており、英検では準1級も持っていますが、将来、英検1級等の資格試験にも挑戦したいです。(U.K.Love、61歳、主婦)


 

上手く話すプレッシャーからの解放

人前で話すのが苦手な方は少なくありません。私もそのひとりです。教師になる前も人前で話す機会が何度もありました。しかし、いつも緊張してしまい、うまく話せないことばかりでしたし、今でも緊張します。経験を重ねたことで、緊張と上手く付き合うことができるようになってきましたが、いまだに人前で話すことが得意とはいえません。

今回のご質問者の方は、日本語でも人前で話すのが好きではないとのことなので、一般的に人前で話すことと人前で英語を話すことについて、私の考えをまとめさせていただいた後、スピーキングの練習方法をご紹介させてください。

まず、人前で話すと緊張してしまうのは仕方のないことです。数多くの経験を積んでも、おそらく緊張しなくなることはないと思います。しかし、緊張を軽減することと緊張とうまく付き合うことが重要だと思います。

 

数回は言い間違えをする心づもりを

緊張を軽減するには、まず緊張する原因について知ることが重要です。専門家ではないので、あくまでも私の個人的な経験に基づく意見となりますが、私が人前で話すときに緊張するのには、いくつかの原因があります。まず、他人が自分の話を聞いていることを必要以上に意識してしまうことが挙げられます。友人や同僚と話しているときにはそれほど意識していないのに、スピーチや発表など、かしこまった場面になると、急に聞き手の反応を必要以上に意識してしまいます。そうなると、「何か言い間違えたりしないか」や「聞き手にしっかり伝わるようにうまく話せているだろうか」と考えだし、急に不安になってきます。この不安が緊張の原因だと思われます。

この不安を軽減するためには、どうしたらいいか。まず、言い間違えることは悪いことではないと自分に言い聞かせることが大切です。考えてみていただきたいのですが、言い間違えが最も少ないと思われるのはプロのアナウンサーですが、彼らでさえ時々言い間違えをしてしまうことがあります。人間ですから、間違えることは仕方のないことです。言い間違えることは人間らしさの表れだと割り切って、逆に数回くらい言い間違えるつもりの心構えで話すと、意外とうまく話せたりします。

とはいっても、言い間違えてしまったら、そのまま放置するわけにはいきませんから、しっかり言い直すという練習も必要になってきます。話している場面にもよりますが、たとえば、人物名や会社名などの固有名詞を言い間違えた場合には、「失礼しました」など、ひと言添えて言い直せば問題ありません。それ以外の場合では、何もなかったかのように、ただ言い直すこともよくあります。

 

相手に伝わりやすい構成の準備を

次に、言いたいことが聞き手にしっかり伝わっているかどうか、という不安についてです。これは、言いたいことを整理する練習をすることでかなり軽減されます。まず、最も伝えたい主旨を最初に伝えます。そして、その考えの根拠となる理由について具体例を用いて説明します。最後に主旨を再度まとめて終わるというのが、聞き手にわかりやすく伝えるパターンです。理由や具体例が複数ある場合には、最初に主旨を伝える際、話す内容の全体像が分かるように、それらの理由についてひと言ずつ言及すると、聞き手が話を聞く準備がしやすくなります。そのためには、話す準備が不可欠です。話す内容の主旨、理由や具体例と話す順番、そして最後のまとめの言葉など、事前にしっかり準備するようにしましょう。

 

使用言語によって、発表時の緊張が違う?

先に書いた言い間違いに対する不安については、英語で話すときの方が比較的割り切れることでもあります。どういうことかというと、たとえば、私が研究発表をする際、日本語でも英語でも緊張はしますが、日本語で発表するときには、特に不安が大きくなります。それは、おそらく、聞き手が私に期待する言語レベルがいわゆるネイティブとしての日本語であるがために、「不適切な日本語を使ってはいけない」と勝手に構えてしまうからだと考えられます。特に著名な方々が多く列席されるような場面で話す際には、他では経験することのないほど不安は大きくなります。おそらく、そのような心配は不要なのだと思います、ですが、そういうときに限って、自分の使う日本語表現を無駄に意識してしまい、堅苦しすぎる表現を使ってしまったり、言い間違えたり、普段はほとんど意識しなくても口からスラスラ出てくる表現もうまく使いこなせなくなってしまうようです。

一方、英語で発表する場合には、多少の間違いがあっても、聞き手が母語話者でない私に期待する英語のレベルがそれほど高くないと感じるので、精神的にも楽になり、使う表現などを意識することなく話すことができます。もちろん発表ですから、どのような順で話せば理解しやすくなるかということは準備段階でよく考えていますし、スライドを使いながら、伝えなければならない点を整理して説明できるため、相手に伝わるかどうかの不安もあまりありません。

 

発表のために原稿は必要か?

準備に関連することで緊張に大きく影響するのが、原稿の有無です。これは人によって捉え方が異なると思いますので、あくまでも参考程度に共有させてください。私が、まだまだ研究者として発表し始めたころは、発表する度に原稿を作成していました。当時は原稿なしで発表することは考えられませんでしたが、一度原稿なしで発表したとき、原稿ありの発表のときほど緊張しないことに気づきました。原稿ありで発表していたころは、原稿を書く段階で表現、言葉遣い、文法等をしっかり考えて作成していましたから、原稿にある英語表現は自分の持っているベストの状態のものでした。しかし、その準備があったからこそ、その通りに話さないといけないというプレッシャーがあり、息苦しくなるほどの緊張をしたことも少なくありません。今では、もちろん内容の準備はしっかりしますが、原稿は書かずに、スライドに書いてある重要ポイントの順にしたがって、詳しい説明を口頭で行うようにしています。この方が意外と緊張しないで発表できます。

 

語彙表現を増やす練習と流暢に話すためのトレーニング

しかし、そうするためには、言いたいことを、原稿を見ないで話せるだけのスピーキング力が必要になりますから、ここからはスピーキング力を磨くための練習方法について述べていきます。スピーキング力を磨くためには、大きく分けて二つの目標が必要です。一つ目は語彙力や表現力を向上するための練習で、もうひとつは流暢に話せるようになるための練習です。

まず、語彙力や表現力についてですが、ここにはもちろん文法力も含まれます。いずれにしても、何も見ないで話すとなると、現在持っている語彙力や表現力の範囲内でしか話すことができないので、それを向上するためには、何か読んだり聞いたりして使える表現の幅を広げる必要があります。現在では、オンラインであらゆる記事や動画が無料で手に入りますから、なにか興味のある記事や動画を見つけて、それで学習することをおすすめします。

さて、記事や動画が見つかったら、そこに登場する表現から、知らなかった表現、知っていて理解はできたけど自分では使えない表現、すでに使えるような表現の3種類に分けてみてください。スピーキングで使える表現を増やしていくには、このうちの2つ目の理解はできるけど、まだ自分の言葉としてはつかえない表現を中心に練習するのがいいと思います。現在すでにTOEIC850点と英検準一級をお持ちですから、読んだり聞いたりすれば理解はできるものの、まだスピーキングの中ではうまく使えない表現が多くあると思います。そうした意味を理解できる表現は、すでに使う準備がほとんどできているので、それらの表現を集めたノートなどを作るのもいいと思います。

実際に使えるようになるには、それらの表現を使い、声に出して話してみる練習が必要です。たとえば、生成AIの使用に関する影響の記事を読んでいて、

Teens tend to be more susceptible to misinformation online than adults.

という文を見つけて、このbe susceptible to~の意味はうまく理解できるけど、自分ではまだ使ったことないという場合、この表現を使って、たとえば、

People who lack sleep are more susceptible to catching colds.

(睡眠不足の人は、風邪をひきやすい)

 

Young people are susceptible to trends promoted by influencers.

(若者はインフルエンサーが広める流行に影響されやすい)

というように、いくつか文を作り、それを録音してみてください。自分ではうまく文が作れない場合もあるので、辞書を使ったり、最近では生成AIが例文を作ってくれたりするので、参考にしてみてください。同じ表現が複数の文の中で使われているのをみると、のちにその表現を文の中で使うときに役立ちます。さらに、最近では、AIが話し相手になってくれたりしますから、be susceptible to~を話の中で使う練習をしたいとAIに伝えて、会話練習になってもらうこともできます。

このような語彙や表現を身につけるための練習には、反復が不可欠です。研究によると、すこし時間を空けて繰り返す分散練習が有効だといわれています。今日、練習した表現を数日後に再度練習し、またその数日後に再度練習するということを何度か繰り返していくと、その表現が使えるようになってきます。この繰り返しの記録をするためにもノートが役立ちます。表現のリストの左端に、練習した日付を書いておくと、何回練習したのか、最後に練習したのはいつかが確認できるようになります。

一方、流暢に話せるようになるには、現在のレベルで話せる題材のみを使用することが重要です。辞書などを使わずに話せる簡単な内容について話すのを、1回の練習の中で3回以上繰り返してみてください。この際、1回目よりも2回目の方が早く言えるように時間制限を設けて、たとえば、最近行った旅行について、1回目では3分間話し、2回目では2分間、3回目では1分間というように、早く言わざるを得ない状況を作り出して反復すると少しずつ流暢に話せるようになっていきます。

ただし、実際に人前で話す際には、早く話すと伝わりにくくなるので、ゆっくり話すのも重要なポイントです。しかもゆっくり話す方が緊張も軽減されて、一石二鳥です。

 

ここまで書いてきましたが、何か人前で話す機会があれば、ますはしっかり準備して、反復練習をして、最後はゆっくりはっきり話せるように本番を迎えてください。

 


★編集部より★

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著者略歴

  1. 横本 勝也

    上智大学 言語教育研究センター 准教授
    カリフォルニア州立大学サクラメント校大学院 修了(MA in TESOL)
    ブリストル大学TESOL/Applied Linguistics博士課程修了 (教育学博士)
    専門は、第二言語習得、英語発音教育。
    著書に、『TOEIC TEST鉄板シーン攻略 文法・語彙』(Japan Times)、『究極の英語ディクテーション Vol. 1』(アルク)、『2カ月で攻略 TOEIC(R) L&Rテスト 730点! 残り日数逆算シリーズ』(共著、アルク)、などがある。

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