Q.154「会話力アップに生成AIをどう使うか」
先日参加した英語学習のセミナーで、生成AIを使った学習をおすすめされました。早速、Grokを手持ちのスマートフォンにインストールしたのですが、講師の方が言うには、精度が良く、しかも瞬時に答えてくれるそうで、会話の良い練習相手になるそうです。ですが、Grokと何の話をするか選ぶのが、なかなか難しいなと感じています。日常会話とかでも良いらしいのですが、例えば「今日あった出来事」とか話すだけでも良いのでしょうか?おすすめのトピックがあれば、教えていただきたいです。また、復習については、どんな風にしていけばよいのでしょうか。たとえば、以前した質問や話を繰り返してもよいのでしょうか。よろしくお願いいたします。
英語教師は、会話のトピックを「言語的要素」と「言語機能の練習」の観点から選ぶ!
英語学習のセミナーに参加されるほど積極的に英語学習をされているとのこと大変嬉しいです。それほどのモチベーションがあれば、着実に英語力が身についていくはずです。
さて、通常の会話レッスンであれば、英語教師が何を話すか提案してくれるのがほとんどですから、何を話すのかなどあまり考えることはしなくていいかもしれません。英語教師がレッスンで扱うトピックは、学校や指定テキストなどで決められたものがない場合、生徒が興味のありそうな内容や将来使えそうな内容の中から、練習してほしい言語的要素や言語機能を多く使えるようなトピックを選ぶことが多いと思います。
たとえば、言語的要素の例であれば、過去形がまだうまく使えない学習者の場合、まず、日常会話で登場するような基本的な単語を使って、しっかり過去形を使えるようになるための練習が必要です。その場合、昨日どこで、誰と、何を食べたかなどでもいいですし、最後に行った旅行について、訪れた場所、出会った人、食べたものなどについて話してもらったりします。それによって、話の中で頻繁に過去形を使用することになるので、効果的な練習になります。
言語機能の練習としては、たとえば、これから海外出張がある学習者のためのレッスンでは、出張先でありうる場面を想定した練習が実用的です。たとえば、訪問先の相手と会ったときの挨拶や、訪問の目的を明確に伝えるための練習や、何かプレゼンのようなものをするのであればプレゼンの練習をしたりします。
ただ、学習者は英語教師ではありませんから、もし、練習したい言語的要素があったとしても、それが頻繁に登場しそうなトピックはなかなか思いつかないかもしれません。せっかくAIを使用するのですから、トピック選びもAIに相談するのもいい考えだと思います。
たとえば、実際に、
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I want to practice using if conditionals through conversation with you. I want to use if conditionals as often as possible. Can you suggest a good topic for that? (会話を通して仮定法の練習をしたいので、仮定法をできるだけ頻繁に使うのに、何かいいトピックを提案してください) |
とAIに話しかけると、以下の回答が返ってきました。
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「Sure ー how about planning your next vacation? If we keep everything conditional, it’ll force us in: if the flight’s late, we skip sightseeing; if it rains, we hit museums instead. Sounds fun? (もちろん。次の休暇の話はどうですか?仮定の話を続ければ、使わざるを得なくなります。たとえば、フライトが遅れたら、観光をとりやめる、雨が降ったら、代わりに博物館に行くなど。楽しそうですか?) |
このように、大量のテキストをベースに発言をしてくれるので、何を練習したいか伝えれば、AIがいいトピックを提案してくれます。もちろん、あまりいいトピックではないと感じたら、他のトピックを提案してもらえばいいでしょう。AIの利点は、何度頼んでも嫌な思いをすることはない点ですから、いい練習になりそうだと思うトピックが提案されるまで、何回も提案し直すようにお願いするのも問題ありません。
AIに自分が話した英語の間違いを指摘してもらおう!ただし...
さて、トピックが決まったら、会話だけでなくて、しっかり練習もしたいので、そのためにAIを有効活用しましょう。AI学習の役に立つ点に、間違いを指摘してくれることが挙げられます。先ほどの例で仮定法を扱ったので、ここでも仮定法の練習をしているという設定で説明すると、たとえば、AIに、
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Can you point out any errors I made in if conditionals and help me correct my errors? |
というように依頼してみてください。すると、前に話した文から間違いを探してきて、どう直すか教えてくれます。AIの良いところは、会話内容が保存されているので、少し前に話した英文に戻って確認することができる点です。この機能を活用して、たとえば、5分間練習したら、振り返りの時間を設けて、AIに間違いを指摘してもらいながら、自分の発言を正しく言い直すといい練習になります。
この表現の間違いなどを指摘することを、専門的には訂正フィードバックといいますが、これは言語発達にとても重要な役割を果たします。通常、会話をするだけの環境では、この訂正フィードバックは行われないので、AIの利点を最大限に生かすためにも、この訂正フィードバックを必ずしてもらうべきだといえます。これにより、明示的に言語表現に「気づく」ことができますから、同じ表現に出くわした際に、また、それに「気づく」ことができるので、学習効果が高まります。これは英語教師のように、訂正フィードバックを与えるトレーニングを受けている人と会話をするのに近い効果が期待できると考えられます。ただし、間違いをすべて指摘するようにAIに依頼するのは避けるべきです。教師が行う訂正フィードバックの効果に関する研究では、すべての間違いを指摘された学習者より、1~3種類の間違いに絞ったフィードバックを受けた学習者の方が、学習効果が高かったことがわかっています。何か目標を決めたら、それに関する訂正フィードバックのみ行ってもらうようにすると、学習効果が高まります。
自分の発音が正しく認識されているかも確認を!
実は、AIを使用して会話の練習をすると、訂正フィードバック以外のフィードバックも受けられることになります。まず、AIでの会話練習は、自動音声認識システムを使用して、音声をテキスト化してくれます。これがまず、第一段階のフィードバックです。ここでは、内容ではなくて、実際に自分が話した英文(英単語)と、AIが認識した英文(英単語)が合っているかどうかを確認することができます。ここでうまく認識されていない場合には、発音の練習が必要かもしれませんが、そこでもAIを利用した発音学習アプリなどで練習するといいでしょう。できれば個々の単語の練習と文単位の練習がどちらもできるようなアプリで、個々の子音や母音の練習に加え、イントネーション(抑揚)や音の強弱、高低、長短の練習ができ、それに関するフィードバックをくれるようなアプリを選ぶといいでしょう。
次に得られるフィードバックは、内容に関するものです。音声は正確に認識されても、そこで使用した表現が間違っていたり、日本語から訳すことから起こる、不自然な表現だったりすると、言いたいことがAIに伝わらないことがあります。もちろん、伝わらなかったときに、AIが「I beg your pardon?」、「Do you mean …?」というように、話した内容を確認してくれることもあります。
少し複雑なのは、自分が本当に言いたかったことではない内容でAIに伝わってしまった場合です。その場合、話した内容がAIに伝わっているかどうかは、話がかみ合っているかどうかで確認しなければなりません。話がかみ合っていない場合には、表現の仕方に問題があった可能性があります。日本語でもいいので伝えたかった内容をAIに伝え、正確に内容を伝えるにはどのような表現を使えばよかったのか、AIに聞いてみるといいでしょう。
そして、その表現を必ず一度は声に出して練習してみてください。このように学んだ表現は、できればまた日を改めて再度使用したいので、次回同じトピックについて話すときに積極的にその表現を使ってください。
その再度使う練習をするというのが、言語学習では非常に重要です。そして、AIの最大の利点のひとつは反復が何度でも行える点です。人間が相手で話す練習をする場合、同じ内容を何度も話すと相手が飽きてしまうことも少なくありませんが、AIは何度同じ話をしても飽きることはありません。
同じトピックを繰り返すことによって、流暢さが磨かれる
反復練習は言語発達には不可欠です。たとえば、流暢さを身につけたい場合、1回の練習で同じトピックについて数回話すと、学習効果が高まることがわかっています。たとえば、次の休暇の話をして、その中で仮定法が何度か練習できたとします。本来ならトピックを変えたいところですが、変えずに、また次の休暇の話をして、同じ内容を全て話し終えたら、再度次の休暇の話をするというように、同じトピックについて少なくとも3回は話すようにすると流暢さが向上していきます。できれば2回目の時は1回目よりも短い時間で、3回目の練習の時には2回目よりも短くするようにして、回数を重ねる毎に少しずつ早く話す練習をするとさらに効果が高まります。
一方、文法や語彙使用の正確さの向上のためには、同じ日ではなくて、日を改めて反復練習すると学習効果が高まるといわれています。次の休暇の話を今日したら、明日、もう一度次の休暇の話をして、2日後にさらにもう一度次の休暇の話をするというように、間をあけて同じトピックについて話す練習をします。それによって、話している文中に登場する文法事項や語彙の定着に繋がります。このように、同じ反復練習にしても、流暢さが目的の場合には1度の練習の中で、正確さが目的の場合には、練習の間隔をあけて反復練習するのが効果を高めるコツなので、目的に応じて反復練習の使い分けをしてみてください。
AIと話す内容には注意を!
以上、生成系AIを使った学習について述べてきましたが、最後に、ひとつ注意が必要なことがあります。それは、AIと話す内容です。AIが相手だからといって何を話してもいいというわけではありません。たとえば、仕事における部外秘の情報などを含む内容は、AI相手に練習するのは避けるべきです。特に仕事でのプレゼン練習をする際には、注意が必要になるでしょう。
AIはオンライン上で情報を扱います。そのため、機密情報や個人に関わる情報は扱わないようにするのが鉄則です。それぞれのAIには、そのようなセキュリティに関する規定が設けられているので、使用するAIについてしっかり理解した上で、有料版の利用や会社ですでに契約しているAIなどを使用するほうが安心ではあります。
このように、AIを使用した学習は、学習者側から発信する情報がオンライン上に一度は保存されることを考えると、情報セキュリティの観点で気をつけるべきことはあります。しかし、学習者のペースでいつでも利用できること、何度も繰り返し練習ができて、フィードバックがもらえるということを考えれば、無料でできる学習方法としてかなり優れています。ぜひ、楽しみながら学習を続けてください。
★編集部より★
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