Q.155「自信を育てるスピーキング学習法」
大学時代に中高の社会の免許を取得しました。社会科に対して強い苦手意識があるため、大学院進学を機に、学生時代に得意科目であった英語の教員免許取得を目指しています。ですが、英語科教育法などの講義を受けてみると、自分が学生時代に受けていた授業とは大きく進化していることを知り、英語力が全くない私にとってすごく落胆する毎日です。来月に10週間の教育実習を控えており、将来的にも英語の教員としてやっていきたいですが、自信が湧いてきません。何から取りかかるべきでしょうか。留学は考えておりません。(けんけん、24歳、大学院生)
ひとりの英語教師として、将来英語教師になりたいという志をとても嬉しく思います。英語に限らないと思いますが、日々生徒とともに学ぶ喜びを共有できるとてもやりがいのある仕事です。一方、教師の言動は生徒の人生を左右してしまう可能性もあるので、責任のある仕事でもあります。英語教師を目指すのであれば、自信を持って英語学習を指導できるようになることが先決だと思いますので、英語に関する根本的な考え方と、英語力を高めることで自信をつけていく方法を考えてみましょう。
どうして英語力に自信が持てないのか
まず、学生時代には英語が得意科目だったということは、試験などである程度の成績を収めていらっしゃったと思うので、基礎的な文法知識と語彙力はあり、ある程度の英文は読んで理解できていたのだと推察します。それを前提とすると、英語力に自信がない原因は主にはスピーキング力にあると考えられます。英語が得意科目だったころの学習方法を思い出していただくと思い当たる節があると思いますが、語彙学習も、文法学習も、読んで理解することを目的とした学習ではありませんでしたか。それは決して間違っていませんし、それによって身につけた基礎力は今後の英語学習で重要な役割を果たします。しかし、基本的には、読むために覚えた語彙は読むときには使用できますが、それをそのままスピーキングで使用することは簡単ではありません。したがって、スピーキング力を向上させるためには、スピーキングで使用する語彙学習と文法学習をするべきだといえます。一概には言えませんが、これまでリーディング力を上げるためにしてきた語彙学習と文法学習と同量のスピーキング学習をすれば、リーディングと同じレベルのスピーキング力が期待できると考えていいと思います。
間違いを恐れて話せないのは、なぜか(受験の波及効果)
さて、スピーキングにおいて、苦手意識を持っている学習者は少なくありません。特に日本人の英語学習者の中で、スピーキングが得意だという人はそれほど多くはありません。それは、受験英語の波及効果によるものだと考えられます。英語学習を始める小学校から大学受験までの間、小中高生にとっては、英語学習の目的が受験で合格することというケースが少なくありません。受験のために英語を学習することは悪いことではありませんが、受験に成功しても英語が使えるようになるわけではありません。それは、多くの場合、受験で問われるのは、それぞれの問題の唯一の正解を探すことであって、実際のコミュニケーションで英語を使用することではないからです。入学選抜試験を行なう目的を踏まえると正解が複数あると不都合ですから、正解がひとつだけの問題を作成するのは仕方ありませんし、運営上の問題を考慮するとリーディングを中心とした問題を作成するのももっともです。そのため、大学受験までの学習者の多くは、リーディングを中心とした学習をしているのが現状で、スピーキングに注力することはあまりありません。したがって、スピーキングを得意とする日本人学習者が多くない大きな要因のひとつには、この受験による波及効果が挙げられるといえます。
受験というのは、少なくとも生徒の近い将来を左右する重要な出来事ですから、波及効果が表れてしまうのは避けられないかもしれません。しかし、リーディング中心の受験のための学習は、学習指導要領で示されている外国語の音声、語彙、表現、文法などの知識を身につけ、「『聞くこと』、『読むこと』、『話すこと(やり取り)』、『話すこと(発表)』、『書くこと』の五つの領域における実際のコミュニケーションにおいて活用できるようにする」という英語教育の目標に反しているともいえます。学習指導要領では正確性についても言及していて、自分の考えを適切に伝え合えるコミュニケーションの基礎となる外国語の音声、語彙、表現、文法などの知識を身につけることを重要視しています。受験英語ではこのうち、語彙、表現、文法の正確性の部分を追求しているので、そのことがスピーキング力にマイナスの影響を与えてしまい、それが学習者の自信のなさにつながっているのかもしれません。
実際には、英語学習者だけでなく、現職の英語教師でもスピーキングには自信がない人が少なくありません。長く続いた受験のための正確な英語の教育が根付いているため、間違えることが許されない環境が伝統的に作り出されてしまっています。話すときには、じっくり語彙、表現、文法について考える時間がありませんから、多少の間違いは許容されてもよいはずです。実際には完全に正確な英語を話すようなネイティブスピーカーはほとんどいません。語彙、表現、文法を正確に話すことは確かに重要ではありますが、実際のコミュニケーションの練習をする場では、最終的に通じる英語が話せることが正解であるべきだといえます。正確性を追求するばかりに、自信がないから発言を躊躇するというのは、そもそもコミュニケーションの第一歩を踏み出せていないことになります。もし、教師が自信なさげに、スピーキングを躊躇している姿を生徒に見せてしまったら、その姿勢が許容されてしまう危険があります。少なくとも、教師としては、多少の正確性を犠牲にしてでも、堂々と積極的に英語で言いたいことを伝えようとする姿勢を手本として見せることの方が重要な意味を持つと考えます。
発音学習、独り言、録音で力をつける!
とはいえ、英語教師たるもの、そこまで正確性を犠牲にするわけにはいきませんから、しっかり正確性をもったコミュニケーションができるようになることを目指して学習を続けるべきです。ここからは、英語スキルアップという面から自信をつけていく方法を紹介させてください。
私には、英語力不足を痛感して、英語教師を目指すならそれに相応しい英語力を身につけなければならないと必死に努力した経験があり、スピーキング力による自信のなさは、スピーキング力アップで克服できるはずだと考えます。スピーキングに特化した練習としては、発音学習と独り言と録音です。
まずは、発音学習についてです。英語教師であれば、難なく通じる発音を身につけておきたいので、発音学習は欠かせません。個々の子音や母音については、発音記号が読めるようにしておくことが今後の学習にも大いに役立ちます。私も本格的に英語学習をはじめたころ、発音記号を読めるように辞書の発音の説明を熟読しました。当時は動画教材や音声教材がそれほど豊富にありませんでしたから、辞書を使用しましたが、現在では子音と母音の発音記号と発音の仕方を詳しく教えてくれる動画教材が複数あります。じっくり時間をかけてでも、発音記号をすらすらと読めるようになるまで、しっかり練習することをおすすめします。私の場合、たとえば、最初は違いが聞き取れなかった/l/と/r/についても、詳しい発音の仕方を学習して、自分の口を使って発音練習を繰り返すうちに、次第に聞きわけができるようになっていきました。
子音と母音の発音がひと通り終わったら、フレーズ単位、文単位で発音をする練習をします。私の場合には、まだ自分でうまく文を作れなかったので、これに関してはとにかく洋楽を歌って練習しました。私はThe Beatlesが好きで、たとえばHey Judeという曲を歌うときには、「ヘイジュード、ドントメイクイットバッド」と歌うと語呂が合わなくなりますし、実際にはどちらかというと「ヘイジュー、ドンメイキッバーッ」と聞こえてくることから、単語の最後にくる/d/や/t/は息を止めるレベルで発音すればいいことや、単語の最後に/k/があっても次に母音(例えばこの場合は/ɪ/)が続くときには、/k/とその母音(/ɪ/)がつながって/kɪ/になるなど、音のつながりの現象に気づきました。その音のつながりが表現できないとうまく歌えませんでしたから、何度も練習したのを覚えています。今では音のつながりを分析できますが、当時はそのような学習の仕方ではなく、聞こえてくる歌手の発音にできるだけ近づけるように繰り返し歌う練習をして、その中で音のつながりを身につけました。
次に試していただきたいのは独り言です。私は車を運転している間はずっと独り言を言ってスピーキングの練習をしました。誰に聞いてもらうわけでもないので、いくら間違えても誰も何もいいませんし、自分が何を表現でき、何を表現できないのかを明確に把握できたので、とてもいい練習だったと今でも考えています。現在では、生成AIが話し相手になってくれますから、独り言に頼る必要はなく、より実践的なやり取りの練習ができると思います。一人になれる時間があれば、生成AIに話し相手になってもらってやり取りの練習をするといいと思います。流暢性をのばすためには、同じことを何度も話すことが重要になってきます。1回の練習で同じことを3回以上繰り返して話すと効果が期待できます。人が相手ではなかなかできない練習ですが、生成AI相手だと何度繰り返しても嫌な気持ちにならないので、ぜひ活用してみてください。
正確な英語を話すためにAI活用を!
生成系AIを利用する利点は正確性の向上にもあります。私の場合には、自分の声を録音してそれを聞き返すことで、修正点を自力で探し出し、より正確に自分の言いたいことを伝える表現などを、時間をかけて探すというような練習を繰り返していました。それと同様の練習が生成AIを利用してできるはずです。一度会話を終えると、そこに記録されているやり取りの中から、ご自身で反省点を探してみるといいと思います。生成AIに頼って、間違いなどを指摘してもらうのもひとつの方法ですが、それを繰り返すと、自力で修正点を探すスキルを伸ばすことができません。このスキルは教師になってから、生徒の発話を聞いて、どこをどうすればもっとうまく表現できるようになるのかを考えるのに大いに役立つので、できる限り自分の力で自分の発話の修正点をみつけるようにしてみてください。
以上、実際に私が行なった練習方法や生成AIを利用した練習方法を紹介させていただきましたが、何よりも重要なのは毎日続けることです。毎日続けることで必ず上達して、その努力が将来誰かの英語学習に役立つはずです。焦らず毎日できることを続けていくと、必ずいい結果が待っています。英語は言語ですから、練習して下手になることはありません。必ず上達するので、ぜひ毎日継続してください。応援しています。
★編集部より★
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