Q.153「文法を感覚的に身につけるには?」
文法が本当に苦手で今までいろいろな参考書を買い、手を出してきましたが、結局ものになりませんでした。簡単な文なら作れ、会話もできるのですが、正確性と瞬発力が欠けていて、自信がありません。友人に帰国子女の子がいて、いつも完璧な英語を話しています。彼女に聞いてみると文法とかはあまり考えずに話しているらしく、本当に羨ましいのですが、正確な英語がナチュラルに出てくるには、やはり海外経験がないと難しいでしょうか。英文法の参考書をこなしているだけでは、到達できないと思うのですが、日本で英語を学んでいても、そうした風に流暢に話せるようになるのでしょうか。
帰国子女のように英語を流暢に話したいという気持ちはとてもよくわかります。確かに海外長期滞在経験があれば、流暢に話せるようになる可能性は高くなるかもしれません。ですが、海外滞在経験がなくても、とても流暢に話せる人も少なからずいます。なので、日本にいながらスピーキングの練習を積み重ねることで、流暢に話せるようになるのは確かです。そこで、日本にいながらスピーキング力をアップさせるためのポイントと具体的な練習方法をご紹介させてください。
海外に行かずにスピーキング力を伸ばすには
まず、スピーキング力をアップするには、当然ですが、スピーキングの練習が必要です。研究者の中には、たとえば「リスニングを通して、英文が理解できるようになると、それを繰り返すことで言語習得が自然に起こる、つまりスピーキングもできるようになる」と考える人もいます。しかし、すでに母国語を獲得していて、すでにコミュニケーションが取れる言語を持っている学習者の場合、生きていく上でどうしても必要というわけではない第2言語を、母国語と同様の条件で習得するのは簡単ではなさそうです。とくに日本で英語を学習するとなると、日常的に英語を耳にすることも、目にすることもありませんから、自然な形で英語を習得するというのはあまり期待できません。
日本で英語学習をする場合、英語を学習するという目的で、英語に触れます。そのため、実際のコミュニケーションのために英語を使用している、という場面があまりありません。しかし、スピーキング学習の目的は、英語をコミュニケーションの中で使用することです。だからこそ、その練習が必要になります。ところが、実際に英語をコミュニケーションの中で使用する機会を探すのは簡単ではありません。英会話スクールに通ったり、英語の話せる友人を見つけたりするという努力が必要です。毎日というわけにはいきませんが、実際に英語で会話する相手がいる環境を作ることはとても重要なので、できる限り英語で話す時間が長くなるような環境づくりを心掛けるといいでしょう。
とはいえ、英語圏のように毎日英語に囲まれているという環境ではありませんから、別の努力も必要になります。その別の努力というのは練習になります。しかし、闇雲に練習してもうまくスピーキング力アップにつながらないこともあるので、しっかりポイントを押さえて練習しましょう。まず、スピーキング力には何が必要かを確認しましょう。スピーキングに必要な知識として、大まかに、語彙、文法、発音の3つがあります。これらの知識を増やしていく学習していくと同時に、それぞれを流暢に使えるようにする練習も必要です。
語彙・文法・発音練習にスピーキングを取り入れる
語彙学習というと、単語帳や単語カードを使ってテストのための勉強をしているようなイメージが強いかもしれません。そのような学習は間違いではありませんし、単語帳で学習した単語や表現に別の場所で出会った際、その意味を理解できるしれません。しかし、スピーキングで使用するのが目標であれば、やはりスピーキング練習を重ねることが必要です。これまで学習してきて理解はできるけれど、実際に英文の中で使えない語彙に関しては、積極的に英文の中で使う練習をするべきです。そしてもちろん、その英文を声に出して言う練習が欠かせません。
文法に関しては少し注意が必要です。文法が苦手だということは、比較的複雑な文法も学習されているかもしれませんが、スピーキングではそれほど複雑な文法を使う必要はなく、基本的な構造が使えれば十分です。そして、完全な文の状態では話さないことも、文法が間違っていても許容されることもよくあります。実際にネイティブが話している英語の中にも、不完全な文やいわゆる文法的には誤りとされてきたような用法が使用されることもあります。書き言葉で使用される文法と区別するために、近年では、スピーキングで使われている表現などの大量のデータを蓄積して、それを基に、話し言葉の英文法というものも登場しています。
発音に関しても、「ネイティブのような発音を目指す」というのは悪い考えではないのですが、そもそも、近頃ではネイティブの発音を定義するのも難しいです。加えて、共通語としての英語 (English as a lingua franca)や世界英語 (World Englishes)を取り入れるという考え方が広まってきています。これは、根本的に、相手が理解さえできれば、日本人らしさの残った英語というのも十分認められるようになってきたということです。
さて、語彙、文法、発音はいずれにしても、学習したらその知識を使える知識へ育てていく必要があります。話し相手がいないときでもひとりでできる練習として、たとえば、テキストにある会話文を何度も音読する、あるいは音声とスクリプトのある教材を使ってシャドーイングする学習者も相当数います。声に出す練習はとても重要で、これらの練習によって、これまで発音してこなかった英語特有の音のパターンの基礎練習になります。そして、自分の声を録音することを組み合わせることによって、自身の発音の改善点を見つけられるので、発音が徐々によくなることは期待できるかもしれません。
何とかできることの反復が上達に!
しかし、これらの練習には根本的な問題があります。それは、学習者本人が伝えたい内容を口に出していないことです。教材にある英文をそのまま使用したのでは、自分が伝えたい内容とは違うものなので、自力で英文を作り出す作業をしていないことがスピーキングのための語彙や文法の練習につながっていないということになります。実際のコミュケーションの中で英語を使用するとなると、自分の頭の中にあるまだ言語化されていないアイデアを言語、ここでは英語、という形で表現する必要があるので、しっかり英語にする練習が不可欠です。
そして、語彙も文法も発音も、自分の力で何とかできることを反復することで流暢に使えるようになってきます。新しい語彙や文法、発音を織り交ぜながら話すと、英文を作り出すときに、その新しい語彙や文法に気を取られてしまうので、なかなかスムーズに口に出せません。ただし、発音の場合、新しく学んだ発音、たとえば音のつながりで、take careのようにある単語の最後の子音と次の単語の最初の子音が同一の場合は、その子音を1回発音すればいいというルールを学んだとしても、それを練習するために同様の音のつながりを含む英文を考えるということも、逆に避けることも難しいでしょうから、発音に関してはあまり新しく学習した発音を含むかどうかを考慮する必要はないかもしれません。
一方、語彙と文法に関しては、すでに学習してよく理解してる、よく知っているといえるようなレベルのものを流暢に使えるようになりたいので、比較的簡単だと感じるレベルの英語で実際に口に出して表現する練習が必要です。そして、それを反復することが非常に重要です。できれば練習するときには、毎回3回以上は同じことを話す練習をしましょう。
自身のレベルにあった英語で表現する練習を繰り返すと、流暢さは増していきますが、それとは別に、表現の幅を広げたいので、これまで読んだり聞いたりして理解はできることはわかっていても、実際に声に出して使ったことのない表現を、自分の言葉として使ってみることも忘れずに行ってください。1文を作るのに数分かかることもあるかもしれません。それでも、この自分の言いたいことを伝えるために今まで使ったことのない語彙や文法を使ってみるというものとても重要な練習です。
そして、流暢性のために考えた比較的簡単な英文も、はじめて口に出すような表現を含む英文も、何らかのフィードバックがあると定着につながります。話し相手がいるときには、通じたかどうかの確認はコミュニケーション上で自然に行なっていることになります。それがとても重要なフィードバックで、これがあることによって、通じたときには、その表現が使えるものだと確認できて、それが記憶として蓄積していきます。そして、通じなかったときには、自分が話した内容を理解してもらうために、何が間違っていたのか探しながら、言い換えたり、間違いを修正したりします。
スピーキング練習にもAI活用を!
最近ではAI技術の発展によって、様々な英会話アプリなども登場しています。スマートフォンを使用して、AIが話し相手、練習相手になってくれるので、それを利用するのも悪くはないと思います。どこまで人間に近いやり取りができるのかというのは、アプリの精度にもよりますが、話し相手がいなくても練習できるというは大きな利点です。そして、AI相手なので、何度間違えても、何度言い直しても迷惑をかけることがないというのも、学習者にとってはとてもありがたいです。
また、特別な英会話用のアプリをインストールしなくても、スマートフォンのメモ帳機能の自動音声認識を使用して、話した内容を書き起こすのもいい練習になります。最近の音声自動認識技術については、性能がかなりよくなってきており、実際に人間が聞いて理解できるレベルの発音ですと、かなりの精度で書き起こしてくれます。逆に、書き起こされた英文が実際に話した英文と異なる場合、そこに発音の問題があるという解釈もできます。そのため、自身の発音の課題に気づくことが可能です。課題のポイントが見つかったら、その箇所を何度も声に出して、自動音声認識が正しく書き起こしてくれるのを目標に発音の練習もできます。さらに、書き起こされた英文を、生成AIによって添削してもらい、語彙や文法チェックも行なうことができます。添削の後、自分の話した(書き起こされた)英文が、ちゃんと意図通りに伝わっているかどうかの確認もできますし、より良い表現を提案してくれたりするので、語彙・文法を理解する良い学習となります。
このように、語彙も文法も発音も、理解している知識を反復することで、徐々に使えるようになり、さらなる反復によってより早く処理できるようになっていきます。このように流暢さを磨いていくと、スラスラ話せる表現が増えていきます。ぜひ試してみてください。
★編集部より★
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